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SS③ 呪いのカーブミラー
「ここの道、呪いのカーブミラーがあるんだよ」
Bさんが路上教習を受けていたとき、助手席に座った担当教官が、突然そんなことを言い出した。
呪いって、とBさんは思わず笑ってしまった。小学校の七不思議ばりにド直球なネーミングだ。担当教官は気さくで陽気な良い人なのだが、ときどきこんな風に、教習とは全く関係ない四方山話を振ってくるのが玉に瑕だった。
「なんすか、幽霊でも映るんですか?」
Bさんは適当に返事をしながら、ブレーキを踏んで減速した。この先はつづら折りの細い道が続く。
十分にスピードを落とし、カーブミラーに対向車が映らないことを確認してハンドルを回した。
「逆だよ。映らないの」
対向車線ギリギリを、トラックがすり抜けていった。
──『呪いのカーブミラー』了──
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