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「……楽しい?」
「ええ。なんかこうね、もう一度青春やらせてもらってる! って感じです」
どこか照れくさそうに笑う坂本先生。
夏の日に焼けた顔に、くしゃりとしわを作った。
「俺の青春は、とうに過ぎてますけど。あいつらといると思い出せるんですよ。俺もこんな風だったなーとか、こんなことで悩んでたなーとか」
彼の視線の先は、グラウンドでがんばる少年少女たち。
熱い日差しに負けずに汗を散らし、光らせていた。
「部活のこととか友達のこととか、今思えばちっぽけな悩みだったなとも思えるんですけど……今のあいつらにとっては、ちっぽけじゃないんですよね、全然」
その言葉に、ふいに胸が苦しくなった。
そう。
この年頃の少年少女には、全然ちっぽけじゃないんだ。
友達のことも、部活のことも、勉強のことも、家族のことも。──……恋愛のことも。
唇を小さく噛む。
急に恥ずかしさが、こみ上げてきた。
(わたし……戸田さんを本当に、傷つけてしまった)
恋愛で傷つくことが、どんなにつらいことか同じ女性として知っているのに。
勝手に羨ましく思って、妬んで。
変な意地悪をしてしまった。
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