ワンス・モア

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 一瞬、言葉につまった。  それはおそらく教師同士と比べて、というニュアンスだとはすぐに気づいたが、あえて距離を置いていたわたしにとっては後ろめたくなる言葉だった。  坂本先生はそんなわたしの反応に気づいていないのか、爽やかに笑う。 「だから嬉しかったですよ。また、お話しましょう」 「……はい」  嫌味のない笑顔に、ホッと心が救われる。  戸田さんとのやりとりで沈んだわたしの心は、思いがけないかたちで優しく満たされたのだった。 ◇  ◇  ◇  数日が経ちもうすぐ夏休みとなる頃、わたしは戸田さんを気にしていた。  あれ以来、彼女の顔を見ていない。元気にしているだろうか。  彼女はきっと、あれが小さな嫌がらせだったことにも気づいていないだろう。  だからこそわたしの不完全燃焼さは、解消されることはない。ただ、彼女の心情が穏やかでいてくれたら……と願うしかなかった。
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