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(あれは……一年一組の子と、二組のサッカー少年か)
この春に入ってきたばかりの一年生の顔は、まだ把握しきれてはいない。けれど二人とも、何となく見覚えのある顔だった。
今はまだ七月。最近までランドセルを背負っていた子たちなのに、こんな雰囲気たっぷりの放課後で告白とは──近頃の子どもは、まったくもってマセている。
しばらく続いた沈黙は、男の子の幼さ残る声がかき消した。
「ごめん。つき合えない」
どこか後ろめたそうに視線を落とす男の子に、女の子は静かに言葉を返した。
「他に好きな子がいるの?」
しばらく間を置いて、男の子はうなずく。
偽らない彼の態度に、真剣に答えようという不器用な優しさを感じた。
「それって……戸田るりちゃん?」
「えっ」
男の子は落としていた顔を上げた。顔が、夕焼けと同じ色になっている。図星らしい。
「……う、うん」
「……そっか」
「昔から仲良かったもんね」と続けた女の子のセリフから、彼女もまた、長年の片想いをしていたのだろうと推測された。同じ小学校だったのだろうか。
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