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中学校という以前よりも大きなコミュニティに放り込まれ、不安定になった片想いの環境。それに彼女は何か変化を起こしたかったのかもしれない。それがこんな結末になることもきっと……覚悟して。
わたしの目が細くなる。
それは夕焼けが眩しかったからに違いないと、身を返してそこから離れた。
◇ ◇ ◇
そんなことがあった翌日の昼休み時間。
保健室で書類を片していると、一人の女子生徒が扉を開けた。
「篠田先生、ちょっと寝てもいいですか?」
「あれ、どうしたの」
そう答えながらも、その子の顔を見てはたと思い出す。
ああ、この子が戸田るりちゃん──あの、サッカー少年の想い人だ。保健委員に所属しているので見覚えがあった。
胸元まで届きそうな長い髪を二つ結びにして幼い印象だが、くるみのようなくりっとした瞳は愛らしい。あのサッカー少年も、案外メンクイかもしれない。
そんなことをわたしが考えているとも知らずに、戸田さんは少し言いづらそうにつぶやいた。
「その……ちょっと、お腹が痛くて。いつもはそうでも、ないですけど……」
遠回しな物言いに、ピンとくる。
「ああ、生理が来たのね」
「……はい」
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