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彼女はまるで罪人のように、しゅんとうなだれた。
生理痛により保健室で休む女の子は多いが、年頃のせいか、その理由で休むことに罪悪感を持つ子がたまにいる。女性なら当たり前のことでも、つい最近まで子どもだった身からしたら、とまどう部分も多いのかもしれない。
そんな感情は、いつの間になくなったんだっけ。
養護教諭をしているせいか、今では男性店員がレジをしていても平気で生理用品を買える自分に、年の積み重なりを感じてしまう。
腰を上げた。保健室を利用するときには体温をはかる決まりがあるので、彼女に体温計を渡す。
「音が鳴ったら教えてね」
「はい」
戸田さんは扉近くのパイプ椅子に座ると、体温をはかり始めた。わたしはベッドを準備しようと保健室の奥に入る。
今日はあまり保健室利用者もなく、今は彼女一人しかいない。
シーツのしわを手アイロンで伸ばしていたら、また保健室に近寄る足音がひとつ聞こえた。
近づいたと思ったら、勢いよく扉が開かれる。
「先生ー、絆創膏ちょうだい!」
聞き覚えのある男の子の声だった。
その声の主の名を当てたのは、わたしではなく戸田さんだった。
「中嶋!」
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