ワンス・モア

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 まくし立てる彼女の言葉は、わたしの耳を素通りしていく。口の動きだけを、機械のように目で追った。 (何を言っているの? だって、山川先生は…………わたしと……)  まあ、ようするに────二股されていた、というワケだ。  そんな浅はかな行動を、まさか自分の彼氏がするとは思ってもいなかった。  職場で知り合った、二つ年上の頼り甲斐のある彼は、中学の英語教師だった。先生や生徒からの信頼も厚く、教育熱心。人としても尊敬できる相手だった。  そんな彼が二股。  しかも両方同じ職場。  しかも学校という聖域で。  妊娠さえなければ、まだその関係を続けていたのか。それとも、もともとこっちが遊びであっちが本命か。……まったく、バカにしている。  今の新しい学校で勤めることとなったわたしは、以前のように笑えなくなり、教師陣とも一定の距離を保って接することにした。  もう、同じことをくり返したくなかった。  裏切られるくらいなら、最初から親しくしなければいい。  あんなに傷つく恋愛は、二度とごめんだ。  いやな思い出が頭の中で蘇っていると、ピピピッと体温計の電子音が鳴ったので、われに返った。
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