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「つい最近、告白されているところ見ちゃったの。モテモテなのね」
わたしのその言葉に、ぐっと彼女は息を飲んだ。
「そう……なんですか」
戸田さんの瞳が、小さく揺れる。
彼女はうつむきかけた頭をむりやりに上げて、笑ってみせた。
「い……意外だなー。サッカーだけは、上手だから。騙されてる子、多いんだぁ」
あわてて虚勢を張って、ごまかしているのなんて丸わかりだった。
わたしが気まぐれで発した言葉で、こんなにも動揺している彼女がとても滑稽に見えた。
(意地はっちゃって)
意地悪な笑みが浮かぶ。
「さ、それより早くベッドで横になりなさい。お腹痛いんでしょう?」
「あ、はい……」
話題をふっておいてこの言い草。
自分の底意地の悪さに、また笑いそうになる。
わたしに促された戸田さんは、ベッドへ足を向けた。一番奥のベッドへもそもそと横になった彼女は、あきらかに先ほどより元気がなくなっている。
仰向けに寝た戸田さんに掛け布団をかけると、彼女はそれを顔を隠すぐらいに引っ張り上げた。
「……ありがとうございます」
瞳が潤んで見えたのは、気のせいだろうか。
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