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みはらしの丘の芝生の上に、まな、私、さくやの順に座る。
街を見下ろすと沢山のプレイヤー達がせわしなく大通りを行き来していた。
今は朝の8時。あの人たちはリアルでは何をする人達なんだろう。
「あの・・・。ね」
まなが街を見下ろしながら話し始めた。
「私、明日から学校に行こうと思うの」
私とさくやは口を挟まなかった。しばらくの沈黙の後、まなが続ける。
「アイツが消えたの・・・。アイツが・・・。アイツが・・・」
まなは声を震わせて俯いた。
頬を涙が伝う。まなは膝に乗せた腕に顔を押し当てて肩を震わせて泣いた。
ただ、ただ、泣いた。
私はまなの肩を後ろからそっと抱いた。
さくやは街を見つめたまま、何も言わなかった。
しばらく、まなは泣き続けた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。まなは少し落ち着くと涙を拭い、私とさくやの手を取って言った。
「私、学校に行けるようになってもT-Worldは続けるよ。学校から帰ってきてからだけどね。これからも一緒に遊んでもらえますか?」
私とさくやは手を3人で重ねて、もらい涙を拭いもしないで、何度も頷いた。
話が終わると、まなはログアウトした。まながログアウトするとさくやも「今日は僕も・・・」とログアウトした。
まなとさくやに会ったのは、この日が最後となった。
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