仮の世界

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2人がログアウトしたので、私は1人でレベルを上げることにした。 ソロでも勝てるエリアで狩りをする。 しばらく狩りをしたが、2人が居ないと何だかあまりやる気がしなかった。 狩場から離れて、大きな石の上に腰をかけて空を眺めた。流れる雲を見つめながら今朝の話を思い出していると、いつの間にか、心の声が漏れていた。 「まな、良かったね・・・」 漏れた声を聞いていたのか、背後から男の子の声がした。 「キミも学校に行きたいのかい?」 一瞬、何を言っているのか理解が出来なかった。しばらくして私は振り向いて、後ろに立っている黒髪の男の子に尋ねた。 「どうしてそれを知ってるの?」 黒髪の男の子は優しく微笑んで答えた。 「僕はT-Worldの管理者だからプレイヤーの事は何でも分かるんだ。まなは僕を覚えていたんだ。ゆゆは今朝も忘れていたね」 ・・・。あ。そうだ。思い出した。朝の夢の男の子だ。 「キミの名前は?」 男の子は微笑んで答えた。 「なつき。ゆゆが学校に行きたいのなら、ゆゆの夢で僕の名前を呼んでくれ」 なつきはそう言うと踵を返し、ゆっくりと丘を下って行った。 ・・・。学校かぁ・・・。 なつきの後ろ姿を見ながら、昔受けた酷いイジメが頭を過ぎる。 ・・・。アイツがいるから、行きたくない・・・。
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