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 朝食のため食堂へ向かう途中、江流久は寧衣良の腕に巻かれた赤いリボンに気がついた。  照明に照らされて美しい光沢のそのリボンは、寧衣良の細い左手首にゆったりと巻かれていて、黒いチープカシオと、寧衣良の白い肌と相待って一際目を引いた。 「あれ、お前プレゼント開けたのか?」 「そうですよー何だか待ちきれなくって!それでこのリボン気に入ったから巻いてるんです。アクセサリーみたいでしょ?」 「いや、どう見てもリボンだが」  昨日までは開ける気にもならなかったのに、何故か早く中身が見たくなった。  この男には繊細な乙女心が分からないのかと心の中で思ったところで、寧衣良はまたもや口に出していることに気が付いたが、もはや気にしなかった。 「はいはい。江流久さんには乙女心が分からないんですよー!あ!緋紗子さんだ!おっはようございまーす!」  エレベーターを待っているところで、ギャラリーから出てきた緋紗子を目ざとく見つけると、寧衣良は右手を振り回して声を掛ける。  緋紗子はそれに気がつくと、少し青白い顔で儚げな笑顔を浮かべた。 「寧衣良ちゃん、そのリボンかわいいね。どうしたの?」 「えへへープレゼントのラッピング用のリボンなんです」  エレベーターに乗り込み、寧衣良が満面の笑みで左手を掲げたところで津久田が駆け込んで来た。  軽く肩で息をしていた津久田は呼吸を整えると 「よかった間に合った。すみませんね駆け込んでしまって。おや、寧衣良さん綺麗な赤色のリボンですね。絵画も同じで、素晴らしい額縁は絵を引き立てるんですよ。アクセサリーや服もそれと同じですな」 「聞きました?江流久さん!さすが津久田さんは分かってますねー!」 「はいはい。ほらエレベーター着くぞ、早く食堂行くぞ」  寧衣良はベロを出し江流久に変顔を披露すると、2階ロビーを駆け抜け食堂の扉を開いた。  昨夜の事件であまり眠れなかったためか、いつもより早い時間の宿泊客たちの来訪に食堂内では慶一郎、ひとみが忙しそうに動き回っていて、馬屋原は江流久たちに気がつくと焦った顔をしながらも調理を続けている。  まだカーテンも開けられていない中、頭に右手を当てながら既に着席していた瑠璃に寧衣良が駆け寄り容態を尋ねると、朝よりは良くなったと礼を言われた。
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