2・地獄の業火

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 しばらく眺めているうちに壁の水漏れに気がついた。聖人像の裏の壁のところに、じんわりと水が染みて床までしたたっている。 「ここ、雨漏りしてるね。天井から伝ってるみたい」  俺が水漏れの流れる元を目でたどって壁を見上げると、ずっと上の方の天井から雨水が伝っているようだった。  ジュリアーノも俺と一緒に天井を見やると、小さくため息をついた。 「壁のカビの原因はこれですね。水漏れの穴を塞げるといいのに。老朽化で天井全体の大規模な修復が必要で、修繕が出来ないんですよ」  俺は不思議に思って訊ねた。 「修繕が出来ないの? このままだといずれ崩れて廃墟になっちゃうんじゃない?」 「費用がないそうです。でもお金の問題だけじゃないんですよ。マッテオ司祭が言うには、この地域は住人が減って寂れましたから、隣の教区と統合してこの小教会は閉じるということです」  ふーん、と俺はひとりうなずいた。もう一度天井を眺める。 「そう言えば俺もここに入るのは初めてだよ。人が来ない場所じゃあ、直してもしょうがないってことか。でも、何だかもったいないね。けっこう綺麗なのに。雰囲気あるっていうか……」  そこで俺は言葉を切った。通路に立っているジュリアーノが唇を固く結び切なげな眼差しで、この教会を眺めていることに気がついたからだ。
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