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養子になった先がローマ貴族だから跡継ぎやら遺産相続のことやらあって、世俗を捨てて神父になるのが簡単ではないらしい。ジュリアーノと俺が知り合ったのも、思い余った彼が家出したからだ。
俺には彼が背負ってる重さのことはうまく理解出来ない。苦しいなら苦しむのをやめちゃえばいい。けれども本人にとっては悩みとはそういうものではないようだ。
信者席に座ったまま、俺は小さく息を吐いて、もう一度彼を見た。
憂いを帯びた彼の外見は豪華な百合の花みたいだ。金髪の端正な顔の青年で、白い神父服がよく似合う。
寂れた小教会にはもったいないような外見だ。でも彼には豪華絢爛なローマ貴族の屋敷も、装飾華やかな礼拝堂も似合わない。頑固にストイックで無表情のまま、この世の贅沢の全てを無視しそう。
ああ、この人は何か見えないものを背負ってひとりで耐えてる人なんだ。
そう思うと彼が常に身にまとう、人を寄せ付けない雰囲気に納得がいく。
もっと明るく笑えばいいのにと俺は思った。きっと綺麗だろうに、俺はなかなか彼の屈託のない笑みを見たことがない。
この人はいつも俗世から浮いているどころか、現世からズレている。当てはまるところがどこにもない。それを可哀想に思う。そんなことを言ったらまた怒られるんだろうけど。
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