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信者席の背もたれに手をかけて、安心させるように俺はにっこり笑った。
「永遠の別れじゃないんだから。その司祭さんともまた会えるよ。助けてくれた恩人だったんだね。あなたが養父以外に心を許してる人がいたなんて、初めて聞いた」
なんだろ、彼が初めてプライベートの部分を覗かせてくれた気分だった。弱くて脆い部分の話だから、そっと扱わないといけないのに。打ち明けてもらってこっそり嬉しい自分がいる。秘密がくすぐったいような。
こういう風に思うなんて、俺はこの人のことが好きなんだろうか。恋というものが俺にはよく分からなくても、彼が気になるのは確かだった。
「あなたと会うのを避けてたのは悪かったよ。館への誘いを断っても俺はずっとあなたのことが気になってた。会ってないときも、あなたのことを時々考えていたよ」
俺は正直に胸の内を告白した。白い神父服で通路に立つジュリアーノに笑いかけた。
「大丈夫だって。困ったときには他の人もいるよ。あなたはひとりじゃないよ」
「カルロ……」
彼は困ったように眉根を寄せた。切なそうな戸惑ったような表情だ。それから信者席に座る俺の方にゆっくり歩いて目の前に来た。
彼の考えが読めないので黙って眺めていると、ジュリアーノは俺に向かって、静かに床にひざまずいた。
互いの目の高さが合って正面で向かい合う。冴えた彼の美貌に宿る真剣な灰の瞳が、吸い込まれそうに美しかった。
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