2・地獄の業火

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 俺はなんだか試されているようで無性にムカついた。こいつは本当に誰のことも信じてない、そんな気がした。  なんでこんな事をするんだ? どうして言うんだ?  助けて欲しいみたいなそぶりを見せておいて、誰のことも拒絶する。  俺は触れられた頬を手でぬぐうようにこすった。 「ジュリアーノ、あなたはどうしようもなく迷子なんだ。行くあてなんてないし、行きたい場所もないんだ」  難しい教理なんて何も知らない。それでも彼の言うことが間違ってるのが、感覚で分かる。  見えない重いものを振り払うようにして首を振ると、勢いよく席から立ち上がった。床に足をつけてしっかり立ち、怒りの感情を叩きつけるように彼を睨んだ。 「あんたは馬鹿だ。どれだけ賢いか知らないけど大馬鹿だよ!」  そう言われてもジュリアーノは動じなかった。凍る冷たい目で拒絶するように言われた。 「あなたに私の何が分かるんですか」  わずかに怒りを含んだ瞳で冷ややかに問われる。まるで彼の身の回りに見えない薄いバリアが張られて、誰の言葉も受け付けない障壁があるみたい。さらに正面から銀の刃を突きつけられるみたいな緊迫感があった。  挑戦的とも取れる彼の言葉に、炎が燃えるみたいに俺の中の怒りに火がついた。  顔を上げてジュリアーノを睨みつけた。胸が強く鼓動を打っていて、ぐらぐらと怒りが湧く。心の底からこみあげてくる熱が体を熱くさせた。
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