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3・背徳の誓約
ジュリアーノは唇を固く結ぶと、覚悟を決めたように迷わない足取りで俺の方に歩いてきた。
えーと、俺、壊されちゃうの?
やばい、怒らせちゃったかな、と冷や汗がたれた。
思わず身を引いて数歩下がると、右足のかかとが後ろの信者席に当たって、俺は後ろ向きに座席に倒れこんだ。起き上がろうとしたときにはもう目の前にジュリアーノが立っていた。
高い場所の窓の光が逆光になって彼を照らしている。少し影になった表情と、全身を包む光の柔らかな縁取りが見えた。
彼は逃げ道を塞ぐみたいに俺のすぐ前に立っている。こいつを殴って逃げようかなと一瞬思ったけど、彼の何かに耐えている、辛そうな張り詰めた表情を見ると、ひどく哀れに感じて動けなかった。
俺が文句を言う前に、ジュリアーノが俺の両腕を掴んだ。細くてひんやりした指がしっかり俺の腕を握って離さない。痛いんですけど。
「あなたが地獄の業火ならば、私は永劫に焼かれたい。愛が痛みなら、この甘美な拷問に苦しみ続けたい。あなたの無自覚は罪です」
ジュリアーノはそう言うと、すぐに身を屈めて俺に口づけをした。逃げる間もなく互いの唇が重なる。彼の態度の冷たさにそぐわない情熱的な激しい口づけだった。
もしかしてぶっ殺されるのかと思っていたので驚いた。身じろぎしたけど口づけは外れない。覆いかぶさるような口づけは長く続いた。
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