プロローグ

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プロローグ

 水とは地球をめぐる血液なのだと、万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチは言った。  現代のローマ郊外の小さな町に住む、もうすぐ中学生の俺、カルロも同じように思うときがある。  雨が降ると町がいつもと違って少し息を潜めているように見えて、ひそかに胸が高鳴る。雨音のリズムと一緒に、俺の中のワクワクするものを探すセンサーが働いて、学校や家で大人しくなんかしていられない。  雨の日はレンガの町並みもしっとりと濡れ、雨粒を受ける木々も生き生きとして、みんなひとつの息遣いの中にある。世界を生かしているのは雨だ。あふれる水滴が地球を丸くしているんだ。命は大きな流れの中のたった一粒の水だから。  人に雨宿りが必要なのは、きっとそこで誰かと出会うためなんだよ。生きているものはみんなきらきら光る雨のしずくなのだと知るために。 f8fda73a-6746-4ed9-ae55-cde05ac83617
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