3・背徳の誓約

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 俺はただただ驚いて硬直してしまった。沸き立っていた怒りの感情が一気に冷えるが、今度はどうしようもなく動揺してしまう。手のひらに汗をかき、心臓が激しく高鳴っている。  あれ? 何でこんなことに?  俺、何かしたっけ。そんなにジュリアーノの心をぐらつかせるような事をしたのかな。誘惑なんかしたつもりはないぞ。  えーと、あの……。うーむ、どおしよ。  めちゃくちゃになった思考回路のまま考えても、彼からの口づけは終わらない。俺は思った以上に口づけが長いことに焦り始めた。文句を言おうにも口は塞がれているし、身じろぎしても両腕が上から押さえ込まれている。  これはいつ終わるんだ。息が吸えないんだけど! 「誓いますか」  やっと互いの唇が離れたときにジュリアーノに問われた。一体何だろうと思いながら、返事よりも怒るよりも、俺は気が動転しながら息をする方が先だった。  懸命に呼吸を繰り返したけど心拍数が上がりっぱなしのまま下がらなくて、心臓がドキドキしている。耳まで熱いし顔も真っ赤だろう。  まだ両腕は捕まれたままで、相手は怖いくらい真剣な眼差しだ。どうしたらいいのか戸惑った俺が黙っていると、もう一回右耳にささやかれた。 「誓うと言いなさい」  恋をささやくというより、犬にお手を教える飼い主みたいだ。  また命令されてる! しかも怖いし。誓うって一体何をだろう。
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