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俺は内心ドン引きしながら、こわごわと彼にたずねてみた。
「あのさ、今のは……何だったのか、聞いてもいい?」
「誓いの儀式と口づけです」
当然のことを教えるように、彼がさらりと答える。どうしてこんな事になったのか理解出来ない俺は、息を飲んだまま固まってしまった。
はあ!? 誓いの儀式?
二人きりの結婚式がいきなり始まって終っていた? パンパカパーン!
何でこうなった!? そういうのって、もっとラブラブなカップルがすることだろう。いつ俺たちの間に甘いムードがあった? 急すぎる! それに何だか、結婚式とも違うような……。これは一体何だ。ええと……。
首をかしげつつ俺がうろたえているうちに、ジュリアーノが掴んでいた俺の手を離した。彼は立ち上がると猫のようにするりと身を引き、俺から数歩離れる。さっきの出来事は何もなかったみたいに、通路を戻っていった。
ジュリアーノが天井近くのはめ込み窓を見上げた。透明な窓ガラスから眩しい日差しが入り始めている。先程よりもしっかりした光が、部屋に差し込んでいた。
窓を見上げた彼が涼やかな声で言った。
「外で鳥が鳴いています。雷が過ぎましたね。雨も止んでいるでしょう」
確かに落ち着いてよく聞けば、外で野鳥が鳴いている。高い場所にある窓をみやると、いつの間にか雷は止んでいた。雨ももう降っていないようだった。
しかし今はそんなのんきな事を言っている場合か?
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