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1・稲妻のワルツ
夏休みのある日、俺は町の中心街の友達の家に出かけたあと、帰宅するためにひとり小走りで道を走っていた。空模様が悪いとはいえ、昼を少し過ぎたばかりの外はまだ明るい。
友達の家を出てしばらくたつと雨が振り始め、小降りだった雨足はしだいに強くなっていった。俺は中心街を外れ、家のある西の地区に向かって走り始めた。
傘もないまま息を切らせて走り、水たまりを飛び越えてもスニーカーはずぶ濡れになり、ショートカットの茶の髪も濡れた。水色のTシャツ、デニムのジーンズ、背負っているナイロンの緑のリュックも雨に打たれている。
俺が家から傘を持っていかなかったのは、夏の雨は冷たくなくて温かいから、少々濡れても大したことないと考えたからだった。
しかし空にかかる灰色の雨雲に、しだいに雷の鳴る音が混ざってきたので、俺は焦り始めた。近道をしようと思って、建物の並ぶ小さな通りを外れ、脇道に入り、さらに木立の中を通る小道を選んだ。
それは小高い丘になった林の中を通る車道沿いの道で、他に通行人もおらず、ごくたまに車道を車が通り過ぎてゆく。
木立の隙間から見える空には厚い雲がかかり、ごうごうとうねっている。
ふと、俺は走りながら通り道沿いに小さな教会があるのが目に入った。それはクリーム色のレンガ作りで、周囲の木立に隠れるようにぽつんと一堂だけ建っていた。
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