1・稲妻のワルツ

3/7
前へ
/25ページ
次へ
 俺はただびっくりして彼を見た。 「ジュリアーノ」  扉を開けたのは、金髪に白い神父服の青年だった。細身で年齢は二十代半ばほど。端正な顔に金縁の眼鏡をかけている。その姿は大天使みたいに綺麗だ。彼の灰色の澄んだ瞳が俺をじっと見ていた。 「カルロ、久しぶりですね」  青年は扉を手で支え、目を細めて俺を見た。 「どうして館の方に来ないんですか。何度も来るように呼んでいるのに」  ジュリアーノの声に少し咎める口調が混じっている。学校の先生みたいだ。再会そうそう責められて俺はむっとした。  二週間ほど前の夏休みの始まりに、俺はこの青年と初めて会った。そのせいである事件に巻き込まれて冒険の末に死にかけたので、それ以降は彼からの会いたいという誘いを全部断っていた。  別に呼ばれたら行かないといけない決まりもない。行くか行かないかは俺の自由のはずだ。最初は話し相手という名目で呼ばれたけど、最終的にこいつからキスをされたり、プロポーズされたりしている。はっきり告白はされていないから、本気かどうか分からないけど。  俺だってこの神父のことは嫌いじゃないし、好きかもしれない。でもいまいち彼の考えが読めないし会話もかみ合わない。緊張感のある相手だ。誘いを断ろうと咎められるいわれはないはずだった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加