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「知り合いの司祭がこの教会に赴任しているんです」
彼が大きく扉を開くと、教会の内部が見える。そう広くはない部屋だった。内側の壁は外壁と同じクリーム色のレンガ造りで、石の床の上にはいくつかの信者席が並んでいた。
高い場所にある明かり取りの窓の光が、内部を照らしている。薄暗くてしんとしていて、誰もいないみたいだった。
「入りなさい」
俺から目線をそらすと、白い神父服のすそをひるがえし、青年は教会内に入っていった。こちらに有無を言わせない言い方だ。
命令されたみたいで俺は戸惑った。緑のナイロンリュックを背負ったまま、扉の前で少しためらう。足を踏み入れていいのか迷った。
今までここに入ったことがない以外は、何も普通と変わらない小さな礼拝所だ。危険なものは何もないのに、入るかどうか考えてしまう。
俺の直感が何かの危険を知らせている。胸をチクリと小さく針で突っつかれるような警告だ。ここに入れば何かが起こる。一体何が起こるのかは分からないけれども。
小さな針が胸をわずかに刺すような虫の知らせは、悪いことか良いことか分からない。なのにワクワクするような興奮で心拍数がわずかに上がる。
はあ、俺って好奇心をくすぐられると弱いんだよね。以前ジュリアーノに関わって、大変な目にあったのに。まあ、ここはローマの地下遺跡じゃないから、もしもまた置き去りにされても危険はないはずだ。
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