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迷った俺は彼を見上げて聞いてみた。
「俺がここに来ることを知ってたの?」
ジュリアーノが振り返り、また彼の灰の瞳と目が合った。彼の口は固く閉じたままだ。端正だけど硬質な感じの表情からは、答えは何も読めない。
眼鏡ごしの眼差しが俺をしばらく見下ろし、やっと彼が口を開いた。
「知ってたらどうしますか」
そうそっけなく告げると背を向けて、教会の中央の通路を歩いていってしまう。
俺は眉をしかめた。彼の白い神父服の背中に向けて、聞こえるか聞こえないかの小声でぽそっとつぶやく。
「変なやつ」
聞こえないかなと思ったけど相手は地獄耳だったみたいで、振り返って睨まれた。今度は眼差しに怒りがこもっている。厳しい声で叱責された。
「そのままだと危ないし風邪をひくから、入りなさいって言ってるんです!」
彼が怒ると同時に、偶然か空の雷雲が大きく鳴った。稲妻の音と衝撃があたりに響く。近くの林の木に落ちたのか、鋭い雷音と空気が大きく震える音がした。地面も天も雷同するようなびりびりした振動を感じる。
別に雷は嫌いじゃないけど、俺はこれにはびっくりしてすくみあがった。横目で雷雲をチラッと見上げてしまう。これはこの雷が収まるまでは教会から出たくない。
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