1・稲妻のワルツ

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 もうしょうがないな。これは逃げられない。ジュリアーノはたおやかな外見だけど、めちゃくちゃ頑固なんだから。  俺は一度肩の力を抜くと、背筋を伸ばして覚悟を決めてリュックを背負い直した。息を深く吸ってから彼を追って歩きだす。  雷雲の下を走って逃げたら、稲妻が走者に落ちるんだっけ。危険じゃん。仕方がない、前に進もう。  それにジュリアーノは変なやつだけど悪人ではない。  半分あきらめて扉をくぐる。礼拝所の中に足を踏み入れた。 「ようこそ、カルロ」  彼は入ってきた俺を見て微笑む。俺の背後で重い扉が蝶番のきしむ音をさせて、自然にゆっくりと閉まった。  扉が閉まると外の光が薄暗がりの中に消えて、雨音も雷の音も小さく遠くなった。  完全に扉が閉まると同時に、なんだか急に外界と自分のいる場所が切り離されたような気がした。
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