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「あきちゃん、僕の、エス。永久に君を愛したい、愛し合いたい、汚らわしい男と女の関係ではなく、無垢な存在の君と、僕。僕の全てをあげたい、君が欲しいよ、永遠に」
「お姉さま」
「僕の制服を脱がせてよ。スカーフを解いて、ブラウスに手をかけるんだ。そして、スカートのジッパーをゆっくり下ろして、僕の全てを見て」
「そんな、こと」
「君だけに捧げる。おいで、僕の可愛いマドンナ」
そして、お姉さまはゆっくりと立ち上がり、私の唇を奪いました。熱い舌が入り込みます、息苦しい。助けて、と言いたい位。頭がくらくらします、私の中にあの人の体液が、そしてあの人は舌を吸う、お姉さま、お姉さま!
その時、お姉さまの瞳に何かがちらりと浮び上がりました。なんだろう、よく知りたくて、お姉さまの右目に近付いて覗き込みました。
そして、そこには。
一人の少女の瞳の中には琥珀の森が広がっています。
全てが黄色がかった飴色をとろりとまぶしてあり、
動く物などおりません。
少女はそこに時折立ち入っては、満足なため息を漏らすのです。
黄色い空、シルエットになった折々の動物、木々、思い出の全てを彼女は琥珀の中に閉じ込めておりました。
今日もまた、森に新しい仲間が紛れ込みました。
可憐で誰かに寄生しなければ生きていけないヤドリギです。
そして彼女は目を閉じます。
琥珀の森は闇に紛れて、そして。
彼女は永遠にその森を愛するのでした。
何一つ変わらないその森こそ、彼女が愛すべきものなのでした。
【琥珀の森】完
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