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祝福・そして全ての根源たる日
おぎゃあ。おぎゃあ。おぎゃあ
そこには新たな生命の誕生を知らせる祝福の音が響いた。
「⬜︎⬜︎⬜︎。男の子だってよ。
…よく、本当によく頑張ってくれた…」
「もう。泣かないでよ…。おめでたいことなのよ?」
どこか辛そうではあるけれど、⬜︎⬜︎⬜︎は笑ってそう言った。
「ああ…。そうだな」
目元を袖で拭き、18歳くらいの青年は強引に笑顔を作る。
「ふふ…。最後に。貴方の笑顔が見れて良かった」
「そんなこと言うな…。二人でコイツの結婚式に出るんだ。そう約束しただろ?」
「…ええ。本当にありがとう」
貴方と会えて、私は幸せ者だわ。愛してる。
…ヴァルハラージのこと。頼んだわよ。
勇者に選ばれたこの子を。導いてあげて…」
「こっちのセリフだ。バカ」
⬜︎⬜︎⬜︎の髪を優しくさすると、涙が出ないよう、グッと我慢して青年は続ける。
「お前に会えて本当に良かった。だからさ、一緒に…」
それを言い終わるまで、⬜︎⬜︎⬜︎の眼は青年の姿を捉え続けられなかった。
青年は目へ必死に力を入れて、ただ安らかで可愛らしい寝顔をじっと見つめ
「…ありがとう、⬜︎⬜︎⬜︎。愛してる」
既に目から溢れている悲しみを無視して笑顔でそう言って、頬へ別れの口づけをした。
それから一分間は。
祝福たる産声だけが変わらずに響き続けた。
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