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よく、ホラー系の物語でこういう一部を目にする。
『風もないのに』
風が吹いてないのに枝が揺れた。扉が開いた。その他、何かが動いた。
この形容詞を見るたび、俺は首を傾げてきたけれど、育つにつれて、この形容に納得した。
風が吹いてなくても色んな物が動く。それは当然だろう。だって、『あの手』があれこれ動かしてるんだから。
時に木々の枝を揺らし、時に扉を開け閉めする。それ以外にも色んな物を動かす。
俺にはずっとそれが見えていた。だから、風が吹いてなくても何かが動くのは当たり前だと思っていた。
でも、世間はそうじゃないんだな。
風でも吹かない限り、枝は揺れないし扉も開閉しない。他の物も動いたりしない。
本来は、世界はそういうふうにできている。そうらしいから、俺もそれにならって、色んなものを揺らしたり動かしたりするのは、『あの手』じゃなく風のせい、そういうことにしておこう。
風もないのに…完
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