あの声に恋してる~たとえあなたが~

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「ねえ、あなた、覚えています?」 コーヒーをテーブルの上に二つ並べて、食事の後のまったりとした時間を過ごす。 私達の至福の時。 「あなたと初めて出会った場所」 「もちろん、覚えているよ」 私めぐ美(めぐみ)は、コーヒーのカップを両手で支えながら一口含ませて、毅史(たけし)さんの顔を覗き込んだ。 「あの頃は携帯電話もなくてね。そもそもあなたが来るのかどうか不安で堪らなかったのよ。そしたら、あなたったら……うふふ」 当時を思い出し、記憶の糸が交差を重ね、あの時の景色が鮮明によみがえる。 「確かあの時は、私が十六歳、あなたは二十歳だったわよね。本当に来るかどうかもわからないまま一人で待つのは、不安もあったけれどドキドキが止まらなくて大変だったんですから」 コーヒーから香るフレーバーが鼻を通り抜けると、何とも言えない興奮が私を包み込んだ。私はそのまま目を閉じ、甘い香りを喉の奥に通した後、記憶を辿るように語り出した。
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