イソヒヨドリが落ちてきた日

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 色んな思考が錯綜したけれど、何より今、私には時間がない。   コロナ自粛で自宅待機で、家庭に縛り付けられている子供たち。その親は皆、(くち)とおしりがもれなくついた可愛い我が子に与えるために、ホットケーキミックスと、日持ちする乾麺を大量にご所望なのだった。  それらが毎日毎日山と運ばれる流通経路の真ん中にある、とあるスーパーの食品倉庫に勤める私は、それらを格納するために、日々フォークリフトに乗らねばならない。 「息子。お前はこの後も、勉強なんてしないだろう。十時になったらペットショップが店を開ける。金は預ける。ミルワームを買って来て、この鳥に与えてやるがいい」  その言葉とお金を残して、私は一人、倉庫に向けて旅立った。  幸いなことに、息子は自転車に乗れるだけの能力はある。馬力もある。昔自転車乗りだったという、私の仲良しに頂いた、格好良く性能の高い自転車(MTB)も持っている。  ただ、ちょっと頭の容量だけは、他家の子よりも不安があったりするのだが……。  案の定、息子は自慢の脚力を生かし、十キロ先のペットショップをすっ飛ばし、二十キロも先にあるペットショップにまで、ミルワームを買いに行ってくれたのだった。 注1)言わずもがな、往復40㎞。  ……良い子なのだよ。心根は。    インターネットで調べたところ、その雛の名前はイソヒヨドリ。  他にもやっぱり保護した方がいたらしく、飼育に関して色々記載がありました。
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