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「……なんか、いいなぁ」
息子が言った。
「親子やね。いいね」
私も言う。
「ヒヨ子ー、大丈夫か?」
そう問いかけた私の方へ、呼ばれた、と勘違いしたヒヨ子は、ぴょんぴょん、と跳ねて来ようとする。
すると。
親が、兄妹が、警戒音を出してそれを止めたのだ。
「すごいなぁ。ヒヨ子止まった」
感心したように、息子が言う。そして。
「なんか、いろいろ心配したけど、大丈夫そうやん。このまま野生に戻れそう」
そう、続けた。
一番、ヒヨ子の育成に尽力した息子が、そう言ったのだ。
嫌だなぁ。なんか寂しくなるなぁ。
そんな風に思っていた私は、息子のその一言で目が覚めた。
そうだ。ヒヨ子は野の鳥で、あれは、果てしない空を飛ぶための翼だ。
そして、息子もまた、いつかここから巣立っていく―――。
息子と私の関係を知る、総ての人から親離れを心配されるほど、私になついている我が子も、獣医師に驚かれたほどに人懐こかったヒヨ子と同じで、きっと、あっさり巣立っていくのだろう。
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