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いつも、寂しがるのは、残された方。
残されて、寂しがって泣くよりは、自分の為に充実した時間を。
食アレで、何も食べられなかった息子の為に一日中、台所に立ち続けた日々の中、封印していた私の夢。
忘れようと思っていた。
なかったことにしよう、とすら思った。
―――でも、もう一度、追いかけていいのかもしれないな。
「なぁ、息子。お母さん、漫画はもう手がアレで無理だと思う。けど、パソコンやったら叩けるからな。頭の中のお話……小説にしてみようかな」
ヒヨ子が飛んだその姿を見送りながら、私も、もう一度挑んでみようかな、そう思った。
「……ええんちゃう? 書けたら、僕にも読ませてな」
ヒヨ子が飛び去った、私と同じ方を見て、息子がぽつんと応えてくれた。
頑張ってみよう。
一人でも、読んでくれる人がいるなら書いてみよう。
そう決めたのは、その、七月五日の事だった。
五十野日夜子。
もう、お分かりだろうけど、この名はヒヨ子に貰った勇気だ。
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