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「保護って、誰が?」
「そりゃ~。」
取り巻きとリーダーが、仲間の一人に視線を向ける。視線を向けられた子は、がっくりとうなだれると、やがて何かを決意したように、顔を上げた。
「わたしが……いく‼」
「うん、それがいいだろう。アスにも僕から言っておくよ。」
すると、今まで地面に這っていたあの蛇型ロボットが彼らのほうに首をむけ、なにやら、甲高い金属音を発し始めた。なにかの電子音みたいだ。
「おい。誰も気づかなかったのか?」
「―?」
「ミスターアナコンダ君からの知らせだ。あそこに、人間の男が隠れているようだ。」
ミスターアンコンダじゃねえぞと、誰かが言ったが、彼の耳には入らない。
入れなかった。
自分は見つかったのだ……
だが、考えをすぐ改めてしまった。
―よく見りゃ、こいつら、タダのガキじゃないか。確かに、灰色の大男はいるが、なんかのドラマか映画の撮影に違いない。
普通の、ヒトとしての常識が、彼の脳裏を占める。
―そうとも、こんなの、普通じゃない。
恐らく、酔っていたせいもあるのだろう。大人としての常識のせいもある。彼は普段目立っていない分、大の男としての威厳を見せたかった。だから、正義感を振りかざそうという気も起った。
ーこいつらをなんとかしなくちゃいかん‼
そうとも、なんとかしなくてはいけない。この灰色の男(?)もなんかの映画のコスプレだ。きっとこいつらは、現実と見分けのつかない、頭の変な奴らだ。そして、こいつらは、かしわぎまなって子を狙っている。
かしわぎまなって子が危ない‼
「おい、お、お前ら‼」
ここでコソコソ隠れてもキリがない。ここは男を見せてやると息巻いて、身を乗り出す。
「お、俺は、全部聞いていたんだぞ‼」
ずっと隠れていたせいか、足腰がおぼつかない。だが、かまうもんか。
「お前らは、きっと、なんかのコスプレが好きなだけのやつらだ。‼」
そう叫んだら、さっきの防護服の子供の一人が近づいてきた。
「あの~すみませんが、どちらさまでしょうか?」
背丈のわりに、大人びいた調子と声だったので、少し拍子抜けした。だが、ここで引くわけにはいかない。
「お前らは、まなって子になんか、ちょっかいを出そうとしているんだろ‼」
以前テレビで見た、警察が万引き者を捕まえたドキュメンタリー番組を思いだしながら、声を荒げた。
「おい‼ 俺は今から警察に行くからな‼」
言ってやった、言ってやった‼
「お前ら、覚悟しとけよ‼」
これで彼にとっては決まったはずだった。
それから、数分くらい、気まずい沈黙が流れた。
――よし、こいつら、ビビってやがるんだな‼
「オイ……」
異常に高い、耳の奥を針で突かれるような声が聞えてきた。
前を見ると、口を動かしているのは、例の灰色の巨人だ。
なにやら、巨人が手まねで、防護服の子供たちに合図を送っている。
「ああ、どうぞ。」
「お手数をおかけして、すみません。」
なにやら、よくサラリーマンがやる、会社役員同士の挨拶みたいなことをして、男はまた拍子抜けしたが、
この際どうでもいい。
「おい、お前ら……」
だが、言いきらないうちに、巨人が男の前に立った。
そして、大人が子供にするように、手を頭の上に置いた―
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