始まりの物語

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冒険者ギルドの扉に手をかける。 幾分緊張しながらドアをあけた。 今日はお祭りの事もあるのか、人があまりいない。 がらんとした室内。 施設のダイニングくらいの広さがある。 あそこは20人以上が一度に食事が取れるほど広いスペースだ。 ここには丸いテーブルが3個とそこに椅子が3脚ずつ置いてあった。 そのうちの一つに座って本を読んでいる人が一人。 壁際に沢山の紙が張り出されている。 その前に二人が並んで立っていた。 入口とは反対の壁際にカウンターが4つある。 そのうちの一つに一人の女の人が座っている。 皆、扉が開いても気にせず自分たちの事をしていた。 僕は女の人のいるカウンターに移動する。 「あの、すみません」 女の人が僕を真っ直ぐに見た。 茶色の髪が真っ直ぐに肩まで伸びている。 瞳も茶色だ。 綺麗だなと思う。 「ここは冒険者ギルドです。どういったご用件でしょうか?」 特に笑顔ではないのに、何故かホッとするその顔を見ながら僕の用件を伝える。 「僕、冒険者登録をしに来ました」 お姉さんは特に何も変わらない。 「了承致しました。では、こちらに記入をお願いします」 紙を出された。 名前を書く欄しかない。 僕は名前を記入する。 「クライシス」と。 お姉さんは僕に針を渡した。 「貴方の血液がほんの少し必要です。その針で指を刺して血液を頂けますか?」 僕は言われるがままに針を受け取り左手の人差し指に針を刺して血の玉を作る。 お姉さんが僕の名前の書かれた銀色のカードを持ってくる。 「ここに血をつけて下さい」 僕は言われるままにカードの上に左人差し指の血の塊を押し付ける。 その瞬間、カードが光輝いた。 一瞬だったけど、眩い光を放つ。 お姉さんは目を見開く。 冒険者ギルドにいた3人もこちらを向いた。 お姉さんがボソリと呟いた。 「カード登録の時に光を放つ事があるっていう噂は本当のことだったんだ。初めて見た」 お姉さんはハッとしてこちらを向いた。 「光を放つのは珍しい事なんですか?」 僕は少し不安になる。僕は冒険者になれるだろうか? 不安が透けて見えていたのだろう。 お姉さんが初めて笑顔になった。 「はい、珍しい事ではありますが、問題はございません。これで登録は終了です。登録費の1リラをお納め下さい」 笑顔は一瞬だったけど、僕は安心する。 それから僕は冒険者についての説明を聞き、魔物の解体の方法を教われるか確認すると、オススメの宿屋をお姉さんに聞く。 僕は少なからず喜んでいた。 ここから始まるのだ。 僕の冒険が。
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