始まりの物語

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王都の高い城壁が僕の目の前に聳え立つ。 門には二つの道がある。 馬車の通る道と歩いて通る小さな道だ。 検閲が行われてるのは門の右側だ。 道が門の中に真っ直ぐ伸びているのに、真っ直ぐに歩いて中に入るものはいない。 僕の町からやってきたのは僕ぐらいかもしれないが、他の町から来た人もいて、それなりに列になってた。 僕は検閲の列の後ろに並ぶ。 僕の前に並んでいた人のお尻に尻尾がついていた。視線を上げると頭には獣の耳が付いている。 見たところ猫のような尻尾と耳だ。 僕は初めて見る獣人を思わずマジマジと見てしまった。 王都には沢山の獣人が住んでいると冒険者には教えてもらっていたが、実際に見たことがなかった。 どこから来たのだろうか? 声を掛けたら失礼だろうか? この尻尾と耳にも神経が通っているのだろうか? ここ何年も生きてきて、一番興味を惹かれている自分に気付く。 僕は僕に問いかけてみる。 消えてしまった記憶の中に獣人の記憶があるのか? 答えは返ってこない。 ただ、僕は心の大きな穴に少しだけ暖かい何かが入ってきたように感じた。 滞り無く検閲を通り、通行税を1リラ払って王都に入った。 その頃には少し日が傾いていた。 急いで冒険者ギルドに向かう。 検閲の時に冒険者ギルドの位置を教えてもらった。 今日は建国祭の事もあり、人がとても多い。 何とか人にぶつかりながら前に進む。 ぶつかった人には必ず「すみません」と声を掛けた。 そんな僕もまた王都に馴染んでいた。 色々な人がいる王都では、田舎から出て来た人も珍しくないようだ。 冒険者ギルドの看板が見えた。 僕は今まで以上に早足にしてその看板目指して歩き進める。
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