笑顔のその先 2

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「あいさつと言うなら、うちよりも先ずは君のところからだろ?次の発情期を待ってからと思ったけど、先に行くかい?」 当然のように言うけれど、うちはぶっちゃけ大丈夫。夫に先立たれたオメガをもらってくれるというだけで、ありがたがって反対なんてする訳が無い。むしろ諸手を挙げて喜ぶだろう。 「うちへのあいさつはいつでも大丈夫です。それよりも冴木さんのご両親の方が、早くあいさつに伺った方がいいんじゃないかと思って」 もし反対されても、ダメージが少ないように・・・。場合によっては約束を、無かったことにできるし・・・。 「うちの親は気にしなくていいよ」 「でも・・・」 なおも食下がる僕に冴木さんは一つため息をついて、眉間に皺を寄せた。 「・・・ならうちへの報告を先にしよう。オレは明日から出張だから、来週以降で都合のいい日を聞いてみるよ」 明らかに乗り気じゃないのが見て取れるけど、でも僕も譲れない。あちらのご両親に会わないうちは先に進むのは怖いから。 「ありがとうございます。僕はいつでも大丈夫ですから、冴木さんとご両親で決めてくださいね」 無理させてごめんね。 心の中で謝りながら、僕は冴木さんに微笑んだ。 本当だっら週末は身体を合わせるんだけど、今日の引越しのために昨日はせず、そして今日も明日からの冴木さんの出張のため何もしないでベッドに入った。それでも二人でくっついて眠ったけどね。 冴木さんの香りに包まれて、その温もりを感じるだけでものすごく幸せを感じる。 冴木さんも同じこと思ってるといいな。 そう思いながら冴木さんの胸に頬を押し付けると、冴木さんも僕のうなじに顔を埋める。 こんなに幸せでいいのかな。 少し前まで絶望の中にいたのに、こんな未来が待ってるなんて考えてなかった。 たとえご両親に反対されても、この幸せの記憶があったら僕は生きていける。 そう思えるくらい、僕は幸せの中で眠りについた。 そして次の朝、冴木さんは出張でアメリカに旅立った。 社長秘書の冴木さんはもちろん社長のお供で、今回の出張は10日だ。本当なら空港までお見送りに行きたかったけど、途中で社長を拾って行くのでもちろん僕がついて行く訳には行かない。 だけど玄関でちゃんとお見送りしたし、いってらっしゃいのハグもちゅうもしたから、お家から無事を祈ってます。 さて、そんなことを思いながら家事をやってたらお昼になった。 ごはんどうしよう。 一人だといまいち作る気が失せちゃうよね。 一人で暮らしてた時はきっちり作ってたのに、冴木さんと暮らすようになったら、一人ごはんはなんだか寂しくて作る気がしなくなってしまった。 いつもなら一緒に食べられなくても、必ず食べてくれるからちゃんと作ってたんだけど、あと10日も帰ってこないなんて・・・。 作っても絶対に食べてもらえない。 そう思うと作る気が・・・。 そうだ。 せっかくだから普段冴木さんには出せないものを作ろう。 そう思って僕は今日のランチはパンケーキにした。 ふわふわしっとりのパンケーキにバターとはちみつをたっぷりかけて・・・。 「いただきます」 おいしいっ。 颯介さんとのことを心の中で整理できたせいか、最近無性に甘いものが食べたくて仕方がない。 もともと甘いものが好きで必ず食後のデザートを食べていたのに、颯介さんが亡くなってから食欲がなかったせいか、甘いものを食べたいと思わなかった。だけど、心が晴れたのと同時に以前の嗜好が戻ったのか、最近甘いものが食べたくなるのだ。
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