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1•美しい恩人
真っ白な光に耐えかねて目をこじ開けると、世界で初めての朝だった。
群青色の空と海の、曖昧な境目の向こうから照らす、橙色の陽光。
海岸で迎える目覚めは山奥のそれより3時間は早い。
流石に、と両の瞼を再度重ね合わせようとすると、
「六花さん、コーヒー淹れたけど。」
と車外からヒルマの呼ぶ声がする。
わたしは大欠伸をして、重い身体を無理矢理起こした。
旧式のスライドドアを押し開けると、砂浜でミニテーブルを広げ、折り畳み式の小さな椅子に、細長い身体を折り曲げてちょこんと座ったヒルマが点てたコーヒーから白い湯気が立ち上っている。
「ミルク…」
「入れた」
昨日買った200ml入りの牛乳パックのゴミ袋に収められているのを尖った顎で指し示し、
当然でしょ、という顔で形のいい鼻をツンと上に向け、自分はホットミルクを舐めている。
ヒルマはわたしに朝を教えてくれた人だ。
一か月か、もっと前か…わたしはインターネットもテレビも見ないし、ラジオも音楽チャンネルの他はほぼ聞かないので正確な日付はよく把握していないが、とにかくヒルマを川べりで見つけたのは今より少し寒い、雨の日だった。
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