僕は君のトリカゴの中

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みんなはいつだった?普通はいつ見つかるの? 幼稚園の〇〇ちゃんとか、小学3年隣の席の〇〇君とか。 中学なんて部活終わりの校内は待ち合わせだらけ。靴箱の前でバレー部の子と待ち合わせていたサッカー部のキャプテンは、2年の時少し仲が良かった。旅行のお土産をもらったこともある。 でも自転車でうちに帰って早めのお風呂に浸かったら、お土産のことも彼の顔も忘れてしまった。 探して見つかるものじゃないって分かってる。だから探さないように意識してた。人生の目標がそれになるのは嫌だったから。 だけど何?この感じ。この話に乗っからないと仲間はずれになりそう。いるの、いないのってオバケじゃないんだから。女の子はいつもいつもこの話。だから嫌でも探してしまう。 見つからない私がおかしいの? ずっと探してる。どこにいけば見つかるの? 映画に誘われた。一緒にご飯を食べた。共通の友達の話で盛り上がったし、シェアしたピザも美味しかった。映画の趣味も合うし、また会う約束だってした。 だけどうちに帰ってお風呂に浸かったら、その日観た映画の内容もその人の顔も忘れてしまった。 ずっと探してるんだけど、どこに隠れてるの? 初めてのお給料でプレゼントを買った。オトナになった。(気がした) 友達はみんな、思い描く未来や、指に光るキラキラを持って、いそいそランチに出かける。私といえば、プレゼントの時計をつけてくれていなくても、会ってすぐに新しく買った車の話をされても、うちに帰ってお風呂に浸かったら、そのこともその人の顔も何もかも忘れてしまった。 全部探したんだけど、見つからないの。 もうあきらめた方がいいのかも。 「だからね、私はずっと好きな人を探してるの。好きな人ってどこにいるんだと思う?」 「君はお風呂に入るだろ?」 「もちろんよ、面倒な日もあるけど」 「忘れることは?」 「え、なあに、眠くなってきたわ」 「そうだね、お休み」 お風呂にゆっくり浸かった後、必ず君は70年物のこの話を始める。僕が君の白い髪を乾かしやすいように君は頭を傾ける。お風呂から僕の元に帰ってきてくれた君は50年間変わらず綺麗だ。孫娘たちは「またおばあちゃん、その話」ってあきれてる。 お風呂にゆっくり浸かったって、君は僕を忘れていない。 てことは、僕は君の、、、。
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