梅雨の音色

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梅雨の音色

 朝から続く雨。  バケツをひっくり返したような……は言い過ぎかもしれないけど、バルブ閉められなくなった、壊れたシャワーのような雨は昼近くになっても止む気配がなかった。  せっかくの休日。出かけるつもりだったのに、雨に降り篭められている。  新しい服が欲しかったし、見たい映画だってあった。映画を見た後はお洒落なカフェでコーヒーを飲んで、充実した休みにしたかった。  梅雨だし、しょうがないよね……。と、自分を納得させてソファーに座り、淹れたばかりの二杯目のコーヒーに口をつける。  今日はテレビの類もつけていないし、音楽も流していない。  一人の部屋に、雨がベランダを叩く音が流れ続ける。  妙に落ち着く。気持ちが、安らぐ。  不思議と、悪くない。  雨の日は、湿気で髪がボサボサになるし、傘は持ち歩くのが邪魔だし、お気に入りの靴も濡れる。  好きな要素なんてひとつもなかった。  それでも――。  ひとりの部屋の中で聴く、雨が奏でる静かな音楽は、心地がよかった。  たまになら、休日の雨も嫌いじゃないかも。
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