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「あーちゃんの声、すっごくエッチ♡」
「変なとこ触るからだよ!りょーくんもエッチ!!」
「俺もか……あはは♪確かにっ♪」
無邪気に笑いながらりょーくんは私の手を引いて、さっき彼が座ってた場所に私を座らせる。
「もうすぐ夕食来るよ。座っておかないと」
そう言って私の肩を軽くポンポンと叩き、りょーくんは向かい側に座った。
「うん……」
「失礼致します。お食事をお持ち致しました」
りょーくんの言う通りすぐにお部屋食の支度が整えられ、次々と並べられていく。
「うわあ〜!!海の幸や山の幸でいっぱい!!」
目の前に並べられたお食事はどれも美しい器に盛り付けられていて、つい大きなリアクションをとってしまう。
SNSの類はやっていないけれど、食事前にスマホで画像を撮る人の心境が理解出来た。
料理に見とれている私にりょーくんは
「あーちゃんはお酒、どれにする?」
と、仲居さんに渡されたらしいメニュー表を手に取って私に聞いてきた。
「お酒って、日本酒?」
「スパークリングワインやビールもあるみたいだよ♪日本酒や焼酎の方が種類豊富なのは確かだけど」
りょーくんの手からメニュー表を受け取り、一通り目を通して見るものの、飲酒歴たった一年の私にとって見聞きした銘柄が無さすぎて余計に困ってしまう。
「うーん……よく分からないからりょーくんと同じのにする」
メニューをりょーくんに返しながらそう言うと、彼は「じゃあ…」と仲居さんに注文を始めた。
「……かしこまりました。ではすぐにお持ち致しますね」
仲居さんがお辞儀をしてお酒を手配してくれ、そんなに待つことなく日本酒と酒器が運ばれると、りょーくんは部屋に入ったばかりの時みたいに仲居さんに何かを渡して御礼を言っていた。
「ではごゆっくり」
仲居さんが引き戸を締めて行ってしまったのを確認した後、さっきのりょーくんの行動を質問してみる。
「さっき何を渡したの?」
私の質問にりょーくんは不思議そうな表情をしながら
「何って、心付けだけど。部屋を案内してくれた方とさっきの人違う人だったから」
「心付け?」
りょーくんの返答を聞いてもピンと来ない私に
「チップだよ、要するに。勿論最初に部屋を案内してくてた方にも渡してるよ」
と微笑みながら教えてくれた。
(ああ!なるほど!チップかぁ〜)
彼の行動に納得して関心したものの
「……って、りょーくんいつの間にそういうの用意してたの?」
渡し方がスマート過ぎて、「心付け」なんていう学生にしては大人過ぎる行動にめちゃくちゃ驚いた。
(しかもりょーくん、財布に一切触れる事なくスッと渡してた!
それって事前に浴衣にいくつか忍ばせて用意してたって事だよね?)
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