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「私、全く思い付きもしなかった……今はりょーくんよりも長く働いているのに」
まだ学生の身ではあるけど、夕紀さんからは正社員と同等のお給料をもらっているからついつい社会人気分でいた。
……だけど、このような高級旅館に来たからこその「常識」に気付けなくて恥ずかしく思う。
「まだ学生だもん。そんなもんじゃない?俺もたまたま旅行の計画立ててる時に知ったくらいだし」
一方りょーくんは今短期バイトしかしてないけれど、それまでは上原さんの元で長い社会生活を積んできている。
今回の旅行準備や勉強、振る舞いのスマートさに私との差がハッキリとあるような感じがしちゃって……
(やっぱりりょーくんって凄いなぁ……)
見た目だけでなく中身も彼の方が大人なんだと思い知らされた。
「まぁまぁあーちゃん、乾杯しようよ♪」
俯く私にりょーくんは明るい声でお猪口を渡す。
「でも……」
「あーちゃん、注いであげるから!一緒に旅行を楽しもうね♪めいいっぱいはしゃいじゃおう!」
「う、うん……」
言われるがままお猪口を受け取ると、りょーくんが冷酒を注いでくれて
「遅くなっだけど、誕生日のお祝いさせて?」
小首を傾げながら私の顔を除きこむ。
「うん♡そうだよね、私の誕生日の為にりょーくんはいっぱい準備してくれたんだもんね♪めいいっぱい楽しむっ!!」
自分の無知を恥じるよりも今は単純にりょーくんに感謝しようと思い、私もりょーくんのお猪口に冷酒を注いで乾杯した。
「じゃあ、乾杯♪」
「かんぱーい♪」
2人で一緒にお猪口に唇を浸して
「わぁ!美味しいね!!この前のお酒とは違った香りがする!!」
「お酒、おススメのものにしてみたけどこれも美味しくて飲みやすいね!!」
「そうだねー。この辺の地酒って言ってたよね」
「うんうん」
一緒に頷き、ニコニコ微笑み合う。
(そうだよねっ♪楽しむのが1番だよねっ!)
大好きな人と過ごす非日常的な時間を楽しむ事にした。
「あーちゃんもお酒すすんでるね。足りなくなったら同じものを追加する?」
空になった私のお猪口にお酒を注ぎながらりょーくんが聞いてきたけど
「えー、たくさん飲んだら酔っ払っちゃうよぉ♪」
手をブンブン振る私。
(りょーくんの良い飲みっぷりに私も一緒になって飲んでしまってるけど、既に顔がポワポワしてるよ〜)
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