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「あったかーい♡」
先に私から檜風呂に足を入れる。
りょーくん曰く、二人同時に入ろうとした時私が恥ずかしがって拒否られたくないから。と、まずは私から湯船に浸かり後からりょーくんが来てくれる事になった。
ポニーテールにしていた髪がお湯についてはいけないと思って、簡単なお団子をサッと頭の上で作ってから肩まで浸かる。
「はあああぁ……幸せぇ……」
極楽気分だけど、さっきの星空を眺めてみようと上を向いても湯気のモクモクであまりよく見えない。
「リラックスチェアに寝転んだ方が見えるもんなんだね星空って」
見上げたままそう呟いて視線を落とし、両手でお湯をすくってみた。
秋夜の外気に触れている所為か、大浴場とは違って湯気の立ち上りが凄い。
檜の香りがふわーっと湯気と一緒に立ち込めて雰囲気たっぷりだ。
(確かにこんなに良い気持ちになるのを、一人で感じるのは少し寂しいかもしれないなぁ。
りょーくんの言う通り、二人で同時に感想言い合って一緒に温まる幸せってあるよねぇ……)
そう思い、りょーくんの事を少し気の毒に感じた。
「湯加減はどう?」
その時、カラカラと露天風呂の出入り口を開ける音を立てながらりょーくんが入ってきた。
「気持ちいいよ♪大浴場より少し湯が熱いのかなと思ったけど外の気温とちょうど良いっていうか」
私がりょーくんの方を振り向いてそう答えると
「なるほどね。大浴場とは多少湯の温度を変えてるのかもしれないね」
と言ってりょーくんは体を洗い流し始める。
「檜風呂っていいねーこんなに良い香りがするんだね!」
「あー、それ俺も思った。テレビのリフォーム番組とかで檜風呂にする人いるけど今なら気持ち分かる気がするよ」
「実際家にあったらメンテナンス大変そうだけどねー」
「そうだね」
りょーくんがお湯をかける音にかき消されないようタイミングを見計らって喋る私達のこの感じ、いつものお風呂の時間みたいだ。
いつもと変わらない空気感が2人の間に流れてて、「なんで最初から一緒に入れなかったんだろう」と自責の念に駆られる。
洗い終わったりょーくんがこっちへ近付くので、私は顔を外の景色の方へ向け、湯の中を少し前進した。
「りょーくん、早くこっちきてきて♡」
私が呼び掛けた直後、ザブーッと湯が流れ出ていき……
「じゃ、お邪魔しまーす♡」
その分の質量を持った彼の肉体が私の背中に触れる。
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