「思うのはあなた一人」

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 (だけど……。だけど私が今、りょーくんと夕紀さんの為に出来る事と言えばこれしか無い……)  私はもう一度、ちゃんと夕紀さんの顔を見て話をする事にした。  「夕紀さんがお店で会った金髪ピアスの男性も笠原亮輔さんで……この白い菊をお供えした方も、毎月カサブランカをお供えしてる方も……笠原亮輔さんなんです」  「…………」  私の言葉に夕紀さんは目を見開かせている。  「夕紀さんごめんなさい!隠すつもりはなかったんです。たまたま夕紀さんに彼の名前を出さなかっただけで……  皐月さんと関わり合いがあったあの中学生の男の子が彼だったなんて本当に知らなくて」  夕紀さんはしばらく固まったままだったけど、状況を飲み込んだのか「そうなんだ」と呟くように答えた。  「そうよね……男の子って急に背が伸びたりすると誰だか分からなくなるくらい大人っぽくなるもんね……」  「夕紀さん!あの……!!」  何て言えばいいのか分からないまま、何か弁解しなきゃと私は口を開く。   「朝香ちゃんが気にすることじゃないよ」  そんな私を夕紀さんは笑って見つめ返してくれた。  「えっ?」  それから夕紀さんは墓石の方を向いてしゃがみ込み、珈琲の香りがするお線香から煙をたなびかせ……  「ちょっと皐月ぃ、あなた毎月彼に会ってたんだったら少しくらい私に教えてくれたっていいじゃないのよ!彼がお店に来た後で私がお参りした時にさぁ、ちゃーんと教えてよって思うわー!!」  「へ?」  「ねぇ朝香ちゃん。皐月ってば気が利かないわよねぇ?秘密主義の妹を持つと苦労するわー!本当にっ!!」  ……と、皐月さんの墓石にも私の方にもケラケラ笑いながら声を掛けていた。  「え?」  夕紀さんの言い回しに私は驚く。  「私ね……なんとなく分かってたんだよ。  月命日前に必ずお花を供えてくれる白い花の人が、笠原亮輔なんじゃないかって……」    夕紀さんは私の方を振り返ってそう言い、また笑顔になる。  「そうだったんですか??」  更に驚いた私に、夕紀さんは「うん」と頷き立ち上がった。  「あくまで『なんとなく』だよ?私達は親戚と絶縁状態だし、義郎さんや裕美さんだって毎月広島からこっちに来れないでしょう?  そうなると皐月のことを知ってる人間は限られるから。その中で笠原亮輔だったらいいかなって……ずっと思ってたんだ」  「そうだったんですか……」
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