知らないお兄ちゃんとの出会い

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知らないお兄ちゃんとの出会い

僕は、あの時まだ5歳だった。 あの日、あのお兄ちゃんに会えて良かったと思っているんだ。 *** 春のお花が咲き誇り、虫達が活発に働く。 そんなお天気で気持ちの良いある日の事。 ママは家事をするのに忙しくしていた。 僕は2階の部屋でオモチャで1人遊んでいたんだ。 ふっと、窓の外に視線をやると、少し離れた木々の所に1人のお兄ちゃんが居た。 小学生くらいだろうか? その時の僕はまだ子供で深くは考えてなかったので、あまり覚えてない。 そのお兄ちゃんは僕に向かって手招きをした。 全く知らない、お兄ちゃんだけど、僕は不思議と怖くなかった。 それよりも、好奇心もあり、何故か引き寄せられた。 ママに気付かれないように僕は、そっと家を飛び出し、あのお兄ちゃんの所へと向かった。 お兄ちゃんの所に着くと、お兄ちゃんが話かけてきた。 「来てくれたんだね。大ちゃん、ありがとう。」 「えっ、お兄ちゃん、僕の名前なんで知ってるの?」 「お兄ちゃんは、大ちゃんの事を、ずっと見ていたから知ってるんだよ。」 「ずっと、見ていたの?お兄ちゃんの名前は?」 「うん。ずっと、見てたよ。お兄ちゃんには名前が無いんだ。」 「どうして?」 「どうしてかな?そのうち分かるよ。それよりね、今日、大ちゃんに来てもらったのは、お兄ちゃんの大切な人達に渡したい物があるんだけど、お兄ちゃんだけだと見つからないんだ。大ちゃん、お兄ちゃんと一緒に探してくれないかな?」 「うん。いいよ。」 「ありがとう。じゃあ、行こう。」 そう言って、手を差し出した。 僕は、その手を握ると、何故だか、とっても安心した。 「大ちゃん、1つ約束してくれる?」 「うん。なぁに?」 「お兄ちゃんが良いと言うまで絶対にお兄ちゃんの手を離さないで欲しいんだ。迷子になってしまうからね。」 「うん。わかった。」 「大ちゃん、ありがとう。さぁ、行こう。」 そう言って、2人で森の中へと歩き出した。
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