洞窟の出口

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洞窟の出口

洞窟の入り口へと辿り着くと、お兄ちゃんが膝を付き僕の目を見てゆっくりと話し出した。 「大ちゃん、ここからは1人で戻るんだ。」 「えっ、お兄ちゃんも一緒に行かないの?暗くて怖いよ。」 僕は急に心細くなり、涙が出そうになった。 するとお兄ちゃんが、ポケットから、さっきの球体を取り出すと話出した。 「大ちゃん、さっきの球体はママに説明して渡してね。お兄ちゃんと大ちゃんがいつまででも愛してると言う事と元気で居て欲しいって事。そして、大ちゃんにはこれ、お兄ちゃんからのプレゼントだよ。」 そして僕の手にそっと乗せた。 「大ちゃん、この沢山の色が入った意味はね、愛、元気、勇気、逞しさ、強さが全て入った球体なんだ。これは滅多に見かけないんだよ。大ちゃんが、お兄ちゃんの言った事ちゃんと理解してくれた時、この球体は大ちゃんの一部となるからね。」 「一部になるってなあに?」 「球体は消えて無くなって目には見えなくなっちゃうけど、大ちゃんの心の中には、あるって事だよ。」 「うん。わかったけど、僕お兄ちゃんと離れたくないよ。」 僕は必死で涙をこらえた。 「大ちゃん、この球体をママに渡してママも理解してくれたら、また会えるからね。すぐにまた会えるよ。」 そう言って、お兄ちゃんは僕の身体を洞窟の方にクルっと回転させた。 「大ちゃんには、この球体があるから、勇気も逞しさも強さもある。だから1人で帰れるよ。振り返らずに行くんだよ。大ちゃん、またすぐに会おうね。」 そう言って、僕の背中を押すとお兄ちゃんの手は離れた。 僕はお兄ちゃんが言った様に振り返らずに、両手には球体を持って歩き出した。 途中から怖さなど、どこへ行ってしまったのか、全く怖くなくなった。しばらく歩くと少しずつ明かりが見えて来た。 洞窟の出口まで辿り着いた。
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