争い

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争い

雨音で掻き消されそうになる声を必死に叫ぶ。 先輩は俺が掴み掛かった勢いでよろけた。 そのまま俺と先輩は掴み合いになってもみ合い、互いの足が絡んで、もつれ、先輩を下に後ろに倒れる。 鈍い音がして、先輩は頭を打ったのか気絶したようだ。 携帯…携帯…。 先輩の懐に手を入れた。 と、それらしい物が指にあたる。 取り出してみると先輩のだろう携帯だった。 俺は携帯を地面に落とすと思い切り何度も踏み付けた。 バキバキッと音がして、足を退かすと先輩の携帯は粉々に割れている。 良し、証拠隠滅。 安心したのも束の間、先輩が身じろぎした。 「…う…うーん…」 薄目を開けた先輩と目が合う。 「保…携帯は渡さない」 そう寝ぼけて先輩は上体を起こした。 俺は油断なく、先輩から距離をとった。 「もう脅そうたってムダだぞ」 先輩は俺の言葉に、自分の携帯の残骸を目にすると、俺を睨みつける。 「保…悪い子だ。悪い子にはそれ相応の仕返しをしなくてはな」 先輩は薄ら笑いを浮かべながら、ズボンのポケットからスタンガンを取り出した。 「これを今のお前が喰らったら、どうなるか…解るな?」 俺の制服は未だに濡れていて、気持ち悪い位、肌にピッチリくっついている。 「…間違いなく感電死か」 先輩は起き上がると、ゆっくり俺に近づいてくる。 「そうだ…保。俺の携帯を壊した罰、しっかりと受けてもらうぞ」 俺は狭い小屋の中で、スタンガンを持った先輩をどう撃退するか考えていた。 「喰らえ!」 先輩が俺目掛けてスタンガンを突きつけてくる。
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