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小屋
少し安心した俺はその建物に向かって走った。
何とか建物にたどり着いた時、俺は息が少し上がっていた。
「はあ、はあ、はあ」
ここなら雨にこれ以上、濡れる心配はなさそうだ。
俺は、肩に担いでいたカバンからフェイスタオルを取りだし、髪をぐしゃぐしゃ拭いた。
俺の持ち物はカバンに全部入れてたお陰で、他の中身も濡れてなかった。
しかし、俺の体はずぶ濡れになっていた。
俺は少しでも、体を乾かそうとタオルで全身をゴシゴシ拭いた。
一区切りついて、俺は建物の中を見回した。
目に入ったのがこちら向きと向こう向きのベンチだった。
それ以外はドアも窓も何も無い古びた小屋って感じだ。
コンビニから屋敷までの間に、こんな小屋在ったか?
俺がふとそう思った時。
「久しぶりだな、保」
後ろから忘れ掛けてた声が聞こえた。
忘れたくても…忘れられない。
俺の背筋に悪寒が走る。
「先輩…日本に帰ってたのか?」
後ろを向いたまま表情を見られない様に、震えそうになる声を何とか平静に保つ。
会いたくなかった。
でも小屋の外は視界不良のままだ。
無事に逃げられる保証は無かった。
「そうだ。それより保、びしょ濡れじゃないか。服を全部下着まで脱いだ方が良い」
そう言う先輩は、いつの間に居たのだろう。
小屋といい、先輩といい、まるで突然現れたかのようだ。
直ぐ後ろに先輩の気配を感じる。
制服の上からケツをまさぐられて、俺の全身は嫌悪感で総毛立った。
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