山手線

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「なんだ……お前ら二人とも東京に来てたのか。え、これすごい偶然だな」 「ああ……あのさ、章吾。落ち着いて聞いてくれよ」 「どうしたんだよ、怖い顔して」  大樹はこわばった表情で正面から俺の両肩を掴んだ。それからまるで自分自身に言い聞かせるように、一言ずつ区切りながら言葉を発した。 「俺たちが、再会したのは、今が初めてじゃないんだ」 「は?」  そのとき鋭い警笛を鳴らして電車が有楽町駅に滑り込んだ。開いたドアに向かって周囲の人混みが殺到する。随分と降りる人が多い。ほとんど車両の全員だ。それと入れ替わるように人が乗ってきて車内は再び混雑した。  ドアの脇に立っていたあきが一瞬外に出ようとした。しかしすかさず乗り込んできた人の流れに押されて叶わなかった。  やがて電車は有楽町駅を出発した。  ドアの窓から外を眺めながら震える声であきがつぶやいた。 「やっぱり、降りられない……」 「降りられないって……あきは有楽町で降りたかったのか?」 「違うの。私は原宿で降りたかった。でも今はもうどこでもいい」 「原宿はまだ先だろ……十駅も先だ。でも二十分くらいだからこのまま乗ってればいい」 「そうじゃなくて、もう何度も降りようとしてるの。原宿でも、他の駅でも、何度も何度も。でも降りられないの」 「章吾、俺から説明するよ」  大樹が割って入り、はっと気がつくと必死に訴えるあきの目には涙が滲んでいた。高校生の頃は男勝りで決して人前で涙を見せるようなタイプの女子ではなかった。  大樹もどちらかといえば血の気が多くやんちゃな生徒だった。こんな風に冷静に場を仕切っている姿には違和感があった。  大樹は一度深呼吸をすると、口を開いた。
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