背徳のオメガ 1

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ああ、そうか。 僕はこの家の子じゃないんだ。 その事実を知った時、僕はショックではなく嬉しかった。 兄とは兄弟じゃない。 その事実が嬉しかった。そしてそれを喜んだ僕は、兄を好きなのだと自覚した。 そしてその、心の解放が引き金になったのか、僕は第二性の目覚めによる初めての発情期を迎えることになった。 それで僕のオメガ性が確定した。5年生の時だった。 それは一般的には早い方ではあるが早すぎることも無く周りに怪しまれることは無かったが、兄はそれから実家に帰ってくることは少なくなった。おそらく、フェロモンで僕達が兄弟でないことを気づかせないためであろうが、露骨に避けていると分からせないように何かと理由をつけて僕と会わないようにしてくれていた。 両親と結託していたせいもあるけど、実家に帰ってきてもたまたま僕がいなかった、というシチュエーションは実に自然作られていた。だから誰も、僕がそれに気づいているとか、ましてや兄弟じゃないことを知っているとは思っていなかった様だ。 僕は僕で、この茶番はいつまで続くのだろう、と思っていた。僕がフェロモンを感じなくなるのは僕が誰かと番った時だ。それまでこんなことを続けるのだろうか。 けれどその茶番は何年も続き、僕は高校三年生になっていた。 兄は家を出たままそのまま就職し、さらに実家には帰って来なくなった。 そして僕はずっと兄を忘れられず、兄を思ったまま誰とも付き合うことは無かった。 そしてついにその日が来た。 兄が結婚することになったのだ。 またしても僕が留守の時に彼女を連れて実家に挨拶に来た兄は彼女と結婚する旨を報告し、両親を喜ばせた。 けれど僕の心は沈んで行った。 兄がこの家を出ていったあの日から、僕は一度も兄に会うことは無かった。 けれどSNSは繋がっていたのでメッセージを送りあったりビデオ通話もしていたから実際に会わなかっただけで、そういう意味では頻繁に連絡は取り合っていた。 だってスマホ越しならフェロモンは関係ないからね。 だから結婚の報告も通話で直接聞いていた。 彼女はふんわりとしたかわいいベータの女性だった。会社の後輩だそうだ。 兄がベータを選んだのは少し意外だったけど、両親はベータだし、特にこだわりもなかったのだろう。そしてそれだけ彼女を好きになったと言うことだ。 僕はそんな二人に笑顔でおめでとうを言い、お祝いを送った。 そして、長年計画していたことを実行することにした。
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