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どれくらい待っただろうか。
不意にドアの鍵が開く音がした。そしてドアが開き、誰かが入ってきてまた閉まると施錠の音がした。
兄だ。
僕はそう確信すると持っていた錠剤を飲んだ。
それは発情誘発剤。
本来ならフェロモン異常を起こしたカップルのために作られた薬だが、今僕が飲んだようにオメガがアルファにフェロモントラップを仕掛ける時も使われたりする。
そう、僕は兄にフェロモントラップを仕掛けようとしているのだ。
おそらく友人に飲まされたであろう兄は酔っていて、玄関に置いてある僕の靴には気づかなかったようだ。
そのままおぼつかない足音はリビングに向かい、ふと止まった。
誘発剤を飲んだ僕の身体は一気に発情し、おそらく濃密なフェロモンを放出しているのだろう。きっと僕の香りに気づいたのだ。
再び動き出した足音はそのまま僕のいる寝室へと近づいてきて、そしてドアが開いた。
鼻に手を当て、ふらふらと酩酊状態の兄はそのままベッドに座る僕のところに来た。僕は立ち上がって兄の首に手をかけるとそのまま唇を合わせる。そして、口移しで兄にも薬を飲ませた。
もう既に兄は僕のフェロモンによって発情しかけている。けれど念には念に入れ、僕は兄にもアルファ用の発情誘発剤を飲ませたのだ。
その薬は実によく効いた。
僕にも兄にも。
薬によって発情した僕達は、本能のまま繋がった。そこには恋人同士の甘やかな言葉も愛撫もない。
兄は邪魔なズボンと下着を取り払うと、何処を触ることも無く一気に猛り狂った熱い肉棒を濡れそぼった僕の後孔に突き挿れ、激しく腰を動かした。そして僕も、そんな乱暴な仕打ちにも関わらず、アルファの肉棒に喜びを感じ、自ら腰を振ってアルファの精を貪り絞った。
どれくらい交わっていたのか。
獣のような咆哮を上げながら一度も抜くことなく、ひたすらアルファの精を注ぎ込まれた僕は気がつくと、兄と繋がったまま意識を失っていた。
兄は多量のアルコールと薬のために半ば意識を失うように眠っていて起きる気配は無い。僕は素早く兄を引き抜くと、急いで後始末をした。
実は事前に持ち込んで敷いておいたシーツを剥がし、本来敷いてあった物をまた敷く。
僕がいた痕跡を全て消し、兄もきれいに清め、何事も無かったかのようにベッドに寝かせた。
僕の匂いも消すために消臭剤をスプレーし、部屋にはすっかり、僕がいた形跡はなくなった。
僕は無かったことにしようとしているのだ。
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