背徳のオメガ 1

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ひとつ屋根の下に住む兄を、好きだと自覚したのはいつだっただろう。 兄は8つ年上のアルファ。そして僕はオメガ。 その兄と血が繋がっていないことに僕が気づいていることを、家族の誰もが気づいていなかった。 両親は共にベータで、フェロモンに疎いこともあったと思う。兄は僕がまだ幼いと思って油断していたのだろう。だけど僕は早熟で、かなり早い段階からオメガの兆しが表れていたし、兄のフェロモンにも当てられていた。 普通近い血縁の間、三親等まではフェロモンの影響を受けない。だから本当なら兄のフェロモンの影響は受けないはずなのに、僕は兄の香りを嗅ぐと、身体が疼いてしまう。 まだ精通もなく、学校の授業でも教わっていない時だった。 だからその夜、自分の身体に何が起こったのか分からなかった。 夜中寝ていると突然身体が熱くなり、下肢が痛いくらいに腫れ上がった。そして、後孔が・・・。 自分の身に何が起こったのかわからず、僕は怖くてたまらなかった。だけど、その日両親は法事で留守にし、家には兄しかいなかった。そしてその兄は・・・。 幼い弟が寝ている隙に、恋人を家に招き入れていた。 兄の部屋からねっとりとした香りが漏れ出て、その影響を受けて僕は発情したのだ。 当然兄は気付かない。 たとえ僕からオメガのフェロモンが出ていたとしても、兄は自分の恋人との交わりに夢中で、その自分が組み敷くオメガのフェロモンの中に他の香りが混ざっていたことに気づかなかっただろう。 だからその夜、僕が恐怖で震えて泣いていても、兄は気づかず、僕はひたすら本能のままに拙い手技で発情を発散させるしか無かった。 兄の情事が終わると、僕の発情も収まった。 翌朝、内緒で恋人を連れ込んだ兄は後ろめたいのか僕の部屋には入ってこず、声だけかけて出ていった。 部屋の中では、初めての発情でぐちゃぐゃになったベッドの上で震えて身を丸くしている僕がいたというのに・・・。 それでも僕は怖くてたまらないながらも、それを誰にも知られてはいけないと思った。 なぜそう思ったのかわからない。 僕はその後ぐちゃぐゃになった寝具と寝巻きを洗い、何事も無かったかように装った。 それは8歳になったばかりの冬だった。 その後僕に定期的な発情期は訪れず、ほかの子供と変わりなく過ごした。 本当にあの夜は、兄の濃いフェロモンに当てられてしまっただけの様だった。
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